このアプリは便利な記録アプリでも、風景にフィルターをかけて上辺だけのノスタルジーに浸るためのアプリでもありません。
写真機の本質に立ち返り、記録ではなく、追憶するためのアプリです。
スマートフォンの進化によって、誰もが美しい写真を残せるようになりました。カメラの性能は向上し、高精細な写真を大量に撮れるようになりました。SNSでは簡単に作品を共有でき、写真技術の平均値も確実に上がっています。
それでも、振り返ることは減りました。
撮ることが簡単になりすぎた結果、見返すことが置き去りになり、誰かに見せるための写真ばかりが増えていったように感じます。ワダチフイルムは、その逆を取り戻すために作ったアプリです。
出かける前にフィルムをセットする。枚数は12枚、24枚、36枚。一本のフィルムを使い切るまで、撮影した写真は確認できません。不便なアプリです。
フィルムを使い切り、現像ボタンを押したとき。その日歩いた道が、地図の上に一本の軌跡として現れます。撮影した場所はピンとして表示されます。
このアプリが大切にしているのは、撮影そのものではありません。撮影後の「現像」であり、歩き終えたあとに立ち上がる一本の轍です。ピンはレビューでも、おすすめスポットでも、誰かに評価されるための投稿でもありません。その瞬間、そこで心が動き、立ち止まったという痕跡です。
ワダチフイルムは、写真を保存するアプリではありません。その日、その場所で感じた空気を、未来の自分へ手渡すためのアプリです。
旅の途中では気づかなかったこと。何年も経ってから思い出すこと。もう会えなくなった人。もう無くなってしまった場所。それらを保存することはできません。
けれど、そこへ向かった道だけは残せる。
だからワダチフイルムは、
目的地ではなく、轍を残す。
写真ではなく、旅を残す。
記録ではなく、追憶を残す。
ぜひ一度、触れてみてください。


